アニメオタク外人さん(主)
2008年、戦争映画『ハート・ロッカー』がオスカーを獲得した
爆弾処理班がスリルを追い求める様を描いた作品で、映画的には大成功だったといえる
しかし、軍事関係者や専門家からは批判された
批判の内容は主に「実際の爆弾処理とは違っている」というもので、これはフィクションにとっては一般的なものだ
その道に携わっている人から見て納得のいくストーリーを作るのは大変な作業だ

もちろん、アニメにも同じことが言える
多くの人がアニメを見て「実際とは違う」と思った経験があると思う
コンテンツの特徴を掴みきれておらず、そのせいで少し不快に感じてしまう

とある作品は、実際とは違う描かれ方をしているにもかかわらず秀逸に表現されている
そう、タイトルで挙げているよう『Free!』のことだ

水泳とともに成長してきた私は、このアニメに出会ったとき興奮した
視聴し実際の水泳とは違う点に気づいたけれど、それでも素晴らしい作品に仕上がっていると思った
今回は水泳について、アニメでは描かれていないこと、描かれていないのに素晴らしいと思う理由を説明したいと思う

注意点:まだ3期は見ていないので3期を含まない解説です

・リレー引き継ぎ

Free!に欠かせない要素がメドレーリレーなので、必然的に引き継ぎも関係してくる
引き継ぎは次の泳者にバトンタッチすることだ
リレーとは選手それぞれの力を合わせるものなので、チームメイト全員が協力する場面を描く必要がある
それで引き継ぎが重要になってくる

2008年のオリンピック
マイケル・フェルプスが史上初の8冠に手をかけていた
ところがアメリカは4x100mリレーでフランスに遅れをとる
フランスのアンカーは世界記録保持者のアラン・ベルナール
彼に泳がれると負ける、と思われた

しかし、ここでアメリカのアンカージェイソン・レザックが驚異的な追い上げをみせる
彼はそのとき自己ベストタイムより1.52秒も早く泳ぎ、逆転勝利を決めた
暇な時間が5分でもあるならこのレースを見てほしい
物凄く価値がある試合だった
レザックのスピードは脅威的だが、ほとんどの選手はリレーのときベストタイムより0.5~0.8秒早くなる傾向がある


なぜリレーだと速く泳げるのか?
通常のスタートとは違い、リレーの場合はスタートを待つ必要がない
つまりチームメイトが壁に触れる直前からスタート動作に入ることができる
ここに例がある




この動きが力強いスタートを可能にし、後の泳ぎすべてに影響を与える
だが『Free!』では描かれていない
作中の引き継ぎは全部普通のスタートと同じで、重要な効果を見逃してる
リレーの引き継ぎはタイム短縮にも役立つが、それを教えることで選手に良い効果を与えることもできる
とくに成長期の選手に教えタイムを縮められれば自信に繋がる

引き継ぎは練習をすることで大きな利益を得られる

効果が現れないことに苦しむこともある

シリーズの文脈に沿った形で引き継ぎのエピソードを作ることは理にかなってる
登場人物は毎日練習しているけれど、全部を描くわけにはいかない
引き継ぎにフォーカスしてチームとしてどう泳ぐか描けば印象深い話になる
現実的である必要はない

『Free!』で描かれる引き継ぎは、チームワークを深める効果として使われる
素晴らしい
リレーのチームワークは他のスポーツほど目立たないかもしれないが、仲間意識は必要不可欠だしリレー回の出来も満足のいくものだった
この仲間意識はシリーズ全体に残ってる

・泳いでいるときの気持ち

水泳選手の中で議論されてることのひとつ
「泳いでるとき何を考えてる?」
人それぞれ違うが、だいたい3つのグループに分けられる

技術者タイプ:身体の動かし方を考えている
音楽家タイプ:自分のペースを保つための曲を脳内再生してる そして「ゾーン※極限まで集中力が高まり、苦痛がなくなり、かつリラックスしている状態)
スイマータイプ:すべてをシャットアウトして泳ぐのみ

自分はスイマータイプだと思う
完全に同じというわけではないけれど、『Free!』で表現されてるものにかなり近い
泳いでいる最中、キャラクターの思考がいろいろな表現で描かれる
綺麗な風景や海の生き物(キャラクターに関連付けられている要素)が多い

umi

こういうシーンに出てくるキャラはかなりリラックスしているようだ
ゾーンに入っているという興味深いシーン
自分の経験や他の人に聞いたことを踏まえて考えると、現実の「ゾーン」はこういうふうにはならない
ゾーンの最中であっても緊張しているのが普通だ
レースではなく日常的な水泳での感覚を思い起こさせる

自分の経験では気晴らしに泳いでいるときや、練習終わりのクールダウンを思わせる
でもこのアニメは自分の泳ぎ方で泳ぐことが本当の喜びだというところに注力してるから、この描写には意味がある
これはレース中の感覚を示すものではない
キャラが水泳に抱いている感覚を示すものだ
これはかなり上手いと思う


・バタフライ

言うまでもなくバタフライを学ぶのが一番難しい
力の入れ方、柔軟性、絶妙な動き、持久力、選手への要求が多い泳ぎ方だ
竜ヶ崎怜が最初に覚える泳法でもある

陸上部にいたという背景を考えると、彼に合った泳ぎ方だと思うかもしれない
それはそうだが、バタフライは短い時間で覚えられるものではない
経験から言うと一番初心者に向いているのは背泳ぎだ
バタフライの動きの細かさと身体にかかる負荷は初心者向きとはいえない

怜はよくギャグ要員になるが、バタフライの才能と他の泳法に苦戦している姿を比べると他のシーンを真面目に見るのが難しくなる
単なるギャグとして終わるならよかった
でも基本的な泳ぎ方が苦手だという要素はずっと彼について回る

他の泳ぎは苦手だがバタフライは上手いという人はいる
バタフライ以外泳げないというのはかなりおかしい


しかしこれはアニメの重要なテーマの中でかなりうまく機能する
怜が遙から得たアイデアは、自分の泳ぎ方で泳ぐべきであり他の人に倣う必要はないということだ
他の人は全員自分の泳ぎ方に特化しているから、
怜が自分の泳ぎであるバタフライに特化しているのは理にかなってる

しかも彼は動きの優雅さにこだわっている
まさしくバタフライに必須の考え方だ
でもまぁバタフライは死ぬほど疲れる
怜が平気そうな顔してるのはアニメの魔法だと思う

・結論

それで、ここから何を得られるか?
まぁ、それはフィクションに何を期待しているかによる
いろいろな理由でストーリーが存在し、多くの場合ストーリーは現実主義と衝突する
完璧に現実に沿った内容は確かに凄いが、作品のメッセージやエンタメ性、展開方法に影響を与える
物語の何を重要視するのかは人それぞれだ
上で挙げた『Free!
』の問題点を無視しても構わないが、他の作品の問題点は気になるかもしれない


『Free!』で改善できる部分は、描写しにくい、できない種類のものではないと思う
リレーの引き継ぎを過度に強調しなくてもいいが、描くことで一般的なテクニックを知る機会になったと思うし、見てみたかった
現実的な水泳を描く代わりに作品のテーマをうまく描いていたから気にならないが

『Free!』の重要な要素がふたつある
上で挙げたことだ
まず自由に泳ぎたいという遙の夢
これは文字通りの意味ではなくて、自分のやりたいようにやるという一般的な欲求のことだ
この考え方は回が進むにつれ登場人物全員に影響を与える

怜はすぐにバタフライを習得し、他の泳ぎ方は全部失敗する
これは現実的ではないかもしれない
彼は遙から学び、自分のやり方を貫いているだけだ


第二に、チームメイト、ライバル、友人の繋がり
関係は絶えず変化する
関係性の変化にリレーの引き継ぎなどを使い、どう変わったのかを水泳の抽象的な表現で見せる技は作劇の観点から見て非常に意味がある


今回挙げたものはすべて普通とは違う視点から来るものだ
純粋な水泳を扱う作品として見ると問題点が多くある
もちろん、見るかどうか決めるのは人それぞれ
創造性は自由に発揮されるべきだし、没入感を損なうと判断する要素は人によって違う


でもぜひ『Free!』を見てほしい
自分の情熱を追求する人たちのアニメで、そのストーリーを伝えるために水泳を使っていると考えればこんな問題は気にならない


アニメオタク外人さん
自分も10年以上水泳をやってきた(大会にも出た)から面白く読めた
自分の視点も書こうと思う

ちょっとした背景:
最初にFree!を見たのは2~3年前
水泳の練習中女の子たちがずっとその話をしてるから興味を持った
当時は非現実的な要素が嫌で見るのをやめたが、2ヶ月前に全部見た
そして今は3期を見てる


アメリカのアンカージェイソン・レザックが驚異的な追い上げをみせる
このレースは今まで見た中で最も印象的だった
4年前水泳キャンプでギャレット・ウェバーゲール(そのリレーに出てた人)がレースについて語ってくれた
レザックは絶対に勝てない試合に勝った、と彼は言った

この動きが力強いスタートを可能にし、後の泳ぎすべてに影響を与える
これは自分も思った
リレーのタイムが問題になったとき触れるかと思った
触れてほしかった

>泳いでるときの気持ち
同意
このシーンは試合中の感情を描いたものじゃない


怜はよくギャグ要員になるが、バタフライの才能と他の泳法に苦戦している姿を比べると他のシーンを真面目に見るのが難しくなる
これが最初見るのをやめた理由だった
でも今はSoL(Slice of Life
)アニメがお気に入りだから平気
自分もテーマによく合ってると思う

>でもまぁバタフライは死ぬほど疲れる
今までで自分がやったことの中で一番バカだなと思うのはバッタで1マイル泳いだこと

完璧に現実に沿った内容は確かに凄いが、作品のメッセージやエンタメ性、展開方法に影響を与える
『響け! ユーフォニアム』が好きな理由がこれだ
晴香と久美子両方が、何をするのか、どうするのか学んでいくところが『Free!』と似てる
どっちが現実的かと言ったらユーフォニアムだと思う
水泳は長くやってる、バンドは昔ちょっとやってただけなのに、ユーフォを見てるとあの頃に戻ったような気持ちになる
『Free!』はそこまでじゃなかった(面白くないという意味ではない)

アニメオタク外人さん(主)
>>2
>このレースは今まで見た中で最も印象的だった
未だに毎年何回も見てる
このときのレザックの記録は歴史上のどの100mラップタイムより0.6秒早い
実力者の試合でこのタイム差はかなり狂ってる


リレーのタイムが問題になったとき触れるかと思った
同じ
その話をはじめたとき技術面に触れるのかと思ってワクワクした
結局触れなかったけどよく出来てた


アニメオタク外人さん
特定のスポーツ、ゲーム、キャリアをテーマにしたアニメは経験者、非経験者で見方が変わるのかずっと気になってた
そして自分が経験者だと言える分野のアニメは見たことがない
面白い分析をありがとう

アニメオタク外人さん
京アニ作品、とくに『Free!』に限って言えば確実に専門家の意見を聞いて作ってる
京アニは視聴者の期待を超えるため努力している

専門的な表現は不要と判断したんだと思う
だから専門性を高めることでよりよくなるかは疑問


アニメオタク外人さん
このアニメが技術的な側面を重要視してないのは1期の時点で明確に分かったと思う
だからその視点からアプローチしても深い洞察は得られない
1期は遙と凛の感情的な対立を中心に事件が起こる
無気力だが才能ある遙の存在は
他の人に影響を与える
2期はフリーしか泳がないという曖昧さを直視せざるを得なくなった遙の話だ

ライティングクラブが何なのか知らんが、シーズン2つのポイントを逃すってのはないわ
水泳の技術ではなくキャラクターの内面にフォーカスすることで他のスポーツアニメには見られないドラマを描けてるのに

水泳は陸上競技や球技(ハイキュー)と比べて戦略やチームワークに複雑さがない
だからこの描き方は賢いと思う
サッカーやバスケとは違いバレーボールは全部の動きを他人と合わせないといけないから、ハイキューではチームワークの下手な影山のようなキャラを効果的に配置できる

アニメオタク外人さん
>>6
ライティングクラブはここにあるコメントすべてですよ!
愛している(または愛していない)アニメについての議論、分析、見通しなんでもござれ

アニメオタク外人さん(主)
>>6
『Free!』を技術的な視点から見てたことは否めない
京アニアニメはクオリティが高いことで有名だから、細かい部分が描かれることを期待したんだと思う
結果として少しがっかりすることになったけれど、だからといって嫌いになったわけじゃない

むしろ技術を忘れて楽しんだ

シーズン2つのポイントを逃すってのはないわ
見逃してはいないが水泳とは関係してないと思った
『Free!』の重要な要素がふたつあると書いたんだが曖昧だったかもしれない
でも水泳とは関係ない視点で重要な要素という意味で挙げたのであって、それがポイントだとは思ってなかった


外国人「物語シリーズは全部が満点、偽物語と憑物語でさえ満点」
この記事もライティングクラブのものでした。


引用元